※丸数字は段落番号
企業概要/事業内容
株式会社 鹿祿(徳島県)
- ②業務用食品製造業、販売先の厨房の管理を担う料理長(以下、販売先料理長という)を通じて依頼がある和食や洋食の総菜、菓子、パン類などの多品種で少量の食品を受託製造している
- ②主な販売先は、温泉リゾート地にある高級ホテルと高級旅館5軒
- ①資本金3,000万円、従業員60名(うちパート従業員40名)
- ②地方都市に立地
- ③ホテル内レストランメニューの品揃えの支援を行う調理工場を標ぼうして1990年にC社を創業
- ⑦総菜の受注量が最も多い
組織
- ①現在の組織は、総務部4名、配送業務を兼務する営業部6名、最近新設した製品開発部2名、製造部48名で構成されている
- ①パート従業員は全て製造部に配置されている
- ⑤C社の製造部は、生産管理課、総菜製造課、菓子製造課、資材管理課で構成されて いる。
- ⑤総菜製造課には5つの総菜製造班、菓子製造課には菓子製造とパン製造の2つの班があり、総菜製造班は販売先ごとに製造を行っている。
- ⑤各製造班にはベテランの パートリーダーが各 1 名、その下にはパート従業員が配置されている。
- ⑬製品開発部は、X社の既存の総菜商品との差別化が可能な商品企画を提案するために外部人材を採用し最近新設された。
経営方針/経営戦略
- 第4問)他のホテルや旅館への販路拡大を図るため、自社企画製品の製造販売を実現したい
- ⑮中堅食品スーパーX社と総菜商品の共同開発・販売に積極的に取り組む方針である
SWOT分析/3C分析/経営資源
機会(ニーズ)
- ③近年、販売先のホテルや旅館では、増加する訪日外国人観光客の集客を狙って、地元食材を使った特色のあるメニューを提供する傾向が強まっているが、その一方で材料調達や在庫管理の簡素化などによるコスト低減も 目指している。
脅威
- ④2020年からの新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受け、C社の受注量は激減していた(最近では新型コロナウイルス感染も落ち着き、観光客の増加によって販売先のホテルや旅館の稼働率が高くなり、受注量も回復してきている。)→解消
強み
- ③現経営者は、高級ホテルの料理人を経験し、ホテル調理場の作業内容などのマネジメントに熟知
- ⑤製造部長、総菜製造課長、菓子製造課長(以下、工場管理者という)は、ホテルや旅館での料理人の経験がある。
- ⑬製品開発部に採用された外部人材は、中堅食品製造業で製品開発の実務や管理の経験がある。
弱み
- 第4問)創業から受託品の製造に特化してきた=C社の企画力不足
生産プロセス
- ⑦前処理、計量・カット、調理は手作業で進められている。
- ⑧C社の製造は、販売先から指示がある製品仕様に沿って、工場管理者3名と各製造班のパートリーダーがパート従業員に直接作業方法を指導、監督して行われている
- ⑨製品仕様は販売先料理長が C 社に来社し、口頭で直接指示を受けて試作し決定する。
- ⑨納入期間中も販売先料理長が来社し、製品の出来栄えのチェックをし、必要があれば食材、製造方法などの変更指示がある。その際には工場管理者が立ち会い、受託製品の製品仕様や変更の確認を行っている。
- ⑨毎日の生産指示や加工方法の指導などは 両課長が加工室で直接行う。
- ⑪販売先への日ごとの納品は、宿泊予約数の変動によって週初めに修正し確定する。朝食用製品については販売先消費日の前日午後に製造し当日早朝に納品する。夕食用製品については販売先消費日の当日14:00までに製造し納品する。
現行業務の課題・問題点
- 【企画】⑩販売先料理長から口頭で指示される各製品の食材、使用量、作業手順などの製品仕様は、工場管理者が必要によってメモ程度のレシピ(レシピとは必要な食材、その使用量、料理方法を記述した文書)を作成し活用していたが、整理されずにいる。
- 【発注】⑪パートリーダーは、月度生産計画に必要な食材や調味料の必要量を経験値で見積り、長年取引がある食品商社に月末に定期発注する。
- 【生産】⑦前処理、計量・カット、調理は手作業で進められている。
- 【生産】⑦C社の製造は、販売先から指示がある製品仕様に沿って、工場管理者3名と各製造班のパートリーダーがパート従業員に直接作業方法を指導、監督して行われている。
- 【在庫】⑪食材や調味料の受入れと、常温、冷蔵、冷凍による在庫の保管管理は資材管理課が行っているが、入出庫記録がなく、食材や調味料の在庫量は増える傾向にあり、廃棄も生じる。
- 【納期】⑪製造日に必要な食材や調味料は前日準備するが、その時点で納品遅れが判明し、販売先に迷惑をかけたこともある。
新規事業
- ⑭現在、C社所在地周辺で多店舗展開する中堅食品スーパーX社と総菜商品の企画開発を共同で行っている。X社では、各店舗の売上金額は増加しているが、総菜コーナーの売上伸び率が低く、X社店舗のバックヤードでの調理品の他に、中食需要に対応する総菜の商品企画を求めている。C社では、季節性があり高級感のある和食や洋食の総菜などで、X社の既存の総菜商品との差別化が可能な商品企画を提案している。
- ⑭この新規事業では、季節ごとにX社の商品企画担当者とC社で商品を企画し、X社が各月販売計画を作成する。納品数量は納品日の2日前に確定する。納品は商品の鮮度を保つため最低午前と午後の配送となる。X社としては、当初は客単価の高い数店舗から始め、10数店舗まで徐々に拡大したい考えである。
- ⑮C社社長は、この新規事業に積極的に取り組む方針であるが、現在の生産能力では対応が難しく、工場増築などによって生産能力を確保する必要があると考えている。
- 第5問)食品スーパーX社と共同で行っている総菜製品の新規事業について、C社社長は 現在の生産能力では対応が難しい
解答方針
- 第1問は、他の問題を検討した後で対応する。
- 第2問は、材料が少なく対応が難しい。後回し。
- 第3問のテーマはコスト削減であり、問題本文に過剰在庫が明示されていたので、比較的取り組みやすい。
- 第4問は改めてじっくり考えてみても難しいので、当日の対応としては割り切りが必要。最低限「レシピの活用」だけ外さない。
解答例
第1問
C社の生産面の強みを2つ40字以内で述べよ。
C 社の生産面の強みについて、分析する能力を問う問題である。
問題要求
「生産面」に限るため、販売面などの強みは含めない。強み1つにつき20文字程度と賭ける文字数が少ないため、取捨選択が必要である。
想起事項
- 強みと言えば、加工技術力、一貫生産体制(ただし、生産に関係ない営業力やマネジメント力などは含めない)
- 第4問「X社との新規事業でも総菜の商品企画」などで活かせる強みが望ましい
根拠
- 一貫生産体制→②業務用食品製造業、販売先の厨房の管理を担う料理長(以下、販売先料理長という)を通じて依頼がある和食や洋食の総菜、菓子、パン類などの多品種で少量の食品を受託製造している
- 加工技術力→③現経営者は、高級ホテルの料理人を経験、⑤製造部長、総菜製造課長、菓子製造課長(以下、工場管理者という)は、ホテルや旅館での料理人の経験がある。
解答例
①多品種少量の受託製造体制と、②C社社長や工場管理者の料理人経験が強みである。
想起した「技術力」と「一貫生産体制」に対応するものを素直に探す。「料理人経験」や「受託製造体制」から無理に回答を膨らませたり、連想したりする必要はない。
第2問
C社の製造部では、コロナ禍で受注量が減少した2020年以降の工場稼働の低下による出勤日数調整の影響で、高齢のパート従業員も退職し、最近の増加する受注量の対応に苦慮している。生産面でどのような対応策が必要なのか、100 字以内で述べよ。
コロナ禍後の増加する受注量に対応するための C 社生産面の課題を整理し、その対応策 について、助言する能力を問う問題である。
問題要求
- 「生産面」での対応策なので、営業面、販売面は除外する。「高齢のパート従業員も退職」→新たにパート従業員を入れるという解答は短絡的。
想起事項
- 受注量を増やす→【Man】人を増やす、人が行う作業量を減らす、【Machine】機械を導入する、【Method】やり方を変えて生産性(効率)を上げる
根拠
- 【Machine】→⑦前処理、計量・カット、調理は手作業で進められている。
- 【Method】→⑦C社の製造は、販売先から指示がある製品仕様に沿って、工場管理者3名と各製造班のパートリーダーがパート従業員に直接作業方法を指導、監督して行われている。
解答例
対応策は、①手作業で行われている前処理、計量・カットなどの工程に専用生産設備や自動加工機を段階的に導入し、生産効率を高める。②作業方法の標準化・マニュアル化を進めて、技能承継の効率化を図る。
第3問
C社では、最近の材料価格高騰の影響が大きく、付加価値が高い製品を販売しているものの、収益性の低下が生じている。どのような対応策が必要なのか、120字以内 で述べよ。
最近の材料価格高騰に対応するため、C 社の資材調達管理、在庫管理、製造工程管理の課 題を整理し、その対応策について、助言する能力を問う問題である。
問題要求
収益=売上(単価×数量)-コストにおいて、単価(付加価値)は考慮する必要がない。販売数量を増やすか、コスト(材料価格以外)を削減する。コスト削減において、原材料高は受け入れるしかない。
想起事項
- コスト削減→材料費、労務費(人件費)、経費(在庫費用、販管費等)の削減→料費については除外し、人件費を減らすわけでもないとすると、経費に絞られる
- 在庫削減策
- 【量を変える】需要予測の精緻化、受注分のみの材料調達、受注量にあわせてロットサイズを決定、基準在庫量の見直し経済的発注量に変更、在庫量を情報共有
【タイミングを変える】資材の発注サイクル適正化、定量発注を定期発注に変える材
根拠
- ⑪パートリーダーは、月度生産計画に必要な食材や調味料の必要量を経験値で見積り、長年取引がある食品商社に月末に定期発注する。
- ⑪食材や調味料の受入れと、常温、冷蔵、冷凍による在庫の保管管理は資材管理課が行っているが、入出庫記録がなく、食材や調味料の在庫量は増える傾向にあり、廃棄も生じる。
解答例
C社はコストを削減するため、①食材や調味料の入出庫を記録して在庫管理を徹底することで、在庫費用と廃棄費用を抑制する。また、②食材や調味料の必要量を、経験ではなく実績に基づく見積りに変えて、発注量の適正化を図る。
資材調達管理、在庫管理、製造工程管理
第4問
C社社長は受注量が低迷した数年前から、既存の販売先との関係を一層密接にするとともに、他のホテルや旅館への販路拡大を図るため、自社企画製品の製造販売を実現したいと思っていた。また、食品スーパーX社との新規事業でも総菜の商品企画が必要となっている。創業から受託品の製造に特化してきたC社は、どのように製品の企画開発を進めるべきなのか、120字以内で述べよ。
自社企画製品の販売を実現するために、創業から受託品の製造に特化してきた C 社の製 品企画開発の課題を整理し、そのために必要となる社内対応策について、助言する能力を問 う問題である。
問題要求
- 問題文が長い=与件に書いていない情報を加えたい(つまり問題文も与件の一部となる)、かつ解答に制約を加えたいという作問者の意図が含まれている可能性が高い
- 自社企画製品の製造販売+食品スーパーX社での総菜の商品企画という、2つの面で商品企画力が必要
- 創業から受託品の製造に特化=C社の企画力不足を示唆する
- 「どのように製品の企画開発を進めるべきなのか」→作問者が期待する解答としては例えば、C社はレシピの情報を活用して企画開発を進めるべき、X社と共同で企画開発を進めるべき、といった記述が想定される
- 「どのように製品の企画開発を進めるべきなのか」の「製品」は、X社と共同で取り組んでいる総菜の企画製品だと思われ、これを自社企画製品の製造販売につなげて、最終的には他のホテルや旅館への販路拡大を図ることが目的
想起事項
企画力を高める→ニーズを収集する、社員の経験を活かす、他社の知見を活かす
根拠
- ③近年、販売先のホテルや旅館では、増加する訪日外国人観光客の集客を狙って、地元食材を使った特色のあるメニューを提供する傾向が強まっている
- ⑩販売先料理長から口頭で指示される各製品の食材、使用量、作業手順などの製品仕様は、工場管理者が必要によってメモ程度のレシピ(レシピとは必要な食材、その使用量、料理方法を記述した文書)を作成し活用していたが、整理されずにいる。
- ⑪長年取引がある食品商社
- ⑬現在、C社所在地周辺で多店舗展開する中堅食品スーパーX社と総菜商品の企画開発を共同で行っている。
- ⑭C社では、季節性があり高級感のある和食や洋食の総菜などで、X社の既存の総菜商品との差別化が可能な商品企画を提案している。
解答例
C社は、①製品開発部の外部人材の製品開発経験を活かして、販売先料理長のレシピを記録・整理し、製品開発部に共有して活用する。②工場管理者の料理人経験を活かして、食品商社から地元食材を仕入れて惣菜メニューを開発し、X社の既存商品との差別化を図る。
受験予備校各社の解答にはかなりバラツキがあり、ピンとくるものがなかった。よってこの問題で点数差はつきにくいと思われる。高得点はあきらめて、自然な解答を心がけたい。
第5問
食品スーパーX社と共同で行っている総菜製品の新規事業について、C社社長は現在の生産能力では対応が難しいと考えており、工場敷地内に工場を増築し、専用生産設備を導入し、新規採用者を中心とした生産体制の構築を目指そうとしている。このC社社長の構想について、その妥当性とその理由、またその際の留意点をどのよ うに助言するか、140 字以内で述べよ。
工場増築などの設備投資によって生産体制を構築し、新規事業の生産に対応しようとす る C 社社長の構想の妥当性とその理由、またその際の留意点について、助言する能力を問 う問題である。
問題要求
- ①妥当性(妥当であるor妥当でない)、②その理由、③その際の留意点、の3つが要求されている。
- 現在の生産能力では対応が難しい→生産能力を増強するための生産体制を構築→①人を増やす、②機械を増やす
- 何について妥当性を判断するのか(判断対象)→上記施策が総菜製品の生産能力向上に寄与するか、ひいてはC社社長の構想(経営方針)に合致するか
想起事項
- 専用機⇔汎用機の特徴
- 「⑮中堅食品スーパーX社と総菜商品の共同開発・販売に積極的に取り組む方針である」という記述があるのに、「妥当でない」と解答するのはリスクが高い
- 留意点=課題
根拠
- ①配送業務を兼務する営業部
- ⑭この新規事業では、季節ごとにX社の商品企画担当者とC社で商品を企画し、X社が各月販売計画を作成する。納品数量は納品日の2日前に確定する。納品は商品の鮮度を保つため最低午前と午後の配送となる。X社としては、当初は客単価の高い数店舗から始め、10数店舗まで徐々に拡大したい考えである。→生産量増加に伴い、配送体制も強化しないといけない
- ⑪食品商社は、C社の月度生産計画と食材や調味料の消費期限を考慮して納品する。
- ⑪製造日に必要な食材や調味料は前日準備するが、その時点で納品遅れが判明し、販売先に迷惑をかけたこともある。
解答例
妥当である。理由は、経験のない新卒社員でも専用生産設備を活用することで、生産能力向上に寄与するから。留意点は、①販売先店舗の拡大に応じて、段階的に配送体制を強化すること。また、②食品商社から仕入れる食材や調味料の仕入管理を徹底し、納品遅れを防ぐこと。
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