仕事で使いそうな知識を習得するため、情報処理安全確保支援士試験の勉強を少しずつ始めています。一応「士」がついている国家資格ですが、登録することのデメリットが大きいようなので、その辺りを詳しく調べてみました。
情報処理安全確保支援士とは?
「情報処理の促進に関する法律」で規定されている国家資格です。法律上の資格名称が「情報処理安全確保支援士」(11文字)、ひらがなにすると「じょうほうしょりあんぜんかくほしえんし」(19文字)、とにかく名前が読みづらくて長くてださいです。通称名は「登録セキスペ」、登録セキスペは「登録情報セキュリティスペシャリスト」の略称です。まだこっちのほうがましです。元々、情報セキュリティスペシャリストという資格があって、その資格の後継が「情報処理安全確保支援士」です。
情報処理安全確保支援士は、情報処理安全確保支援士の名称を用いて、事業者その他の電子計算機を利用する者によるサイバーセキュリティ(サイバーセキュリティ基本法(平成二十六年法律第百四号)第二条に規定するサイバーセキュリティをいう。以下同じ。)の確保のための取組に関し、サイバーセキュリティに関する相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行うとともに、必要に応じその取組の実施の状況についての調査、分析及び評価を行い、その結果に基づき指導及び助言を行うことその他事業者その他の電子計算機を利用する者のサイバーセキュリティの確保を支援することを業とする。
情報処理の促進に関する法律 第6条
要は、情報漏洩事件が頻発している昨今において、情報セキュリティの重要性が高まっているので、それについての相談に対応できる高度なIT人材を育成しましょう、という趣旨で創設された資格です。
登録の要件は?
以下のいずれかの要件を満たせば、登録可能です。
- 情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)試験に合格すること
- 警察、自衛隊、内閣官房、情報処理安全確保支援士試験委員のうち、所定の要件を満たすこと
- IPAの産業サイバーセキュリティセンターが行う中核人材育成プログラムを修了し、1年以内に登録を受けること
ちなみに、中核人材育成プログラムという研修の受講料は1年間で500万円だそうです。我々一般人は、試験に合格するしかありません。
【デメリット1】お金がかかりすぎ
登録の有効期限は、登録日から起算して3年だそうで、3年間にかかる費用をみていきましょう。まず、登録するときに以下の費用がかかります。
- 登録免許税 9,000円
- 登録手数料 10,700 円
次に、資格を維持するためには毎年講習を受けないといけません。
さらに、3年に1回、実践講習or特定講習という集合研修を受講しないといけません。
- 実践講習(IPA主催) 80,000円(約11時間)
- 特定講習(民間企業主催) 料金まちまち
つまり、3年間で約16万円もの大金を払わないと資格を維持できないということになります。
8万円もする実践講習の中身は、こちらの記事をご参照ください。
【デメリット2】権利はないのに義務はある
情報処理安全確保支援士になったからといって、独占業務があるわけではありません。にも関わらず、義務だけは押し付けられるようです。
信用失墜行為の禁止
情報処理安全確保支援士は、情報処理安全確保支援士の信用を傷つけるような行為をしてはならない。
情報処理の促進に関する法律 第24条
経済産業大臣は、情報処理安全確保支援士が第二十四条から第二十六条までの規定に違反したときは、その登録を取り消し、又は期間を定めて情報処理安全確保支援士の名称の使用の停止を命ずることができる。
情報処理の促進に関する法律 第19条
情報処理安全確保支援士の信用を傷つけるような行為の具体例はわかりませんが、基本的に何らかの犯罪行為をすれば、当然ながら信用を傷つけることにはなると思います。
秘密保持
情報処理安全確保支援士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。情報処理安全確保支援士でなくなつた後においても、同様とする。
情報処理の促進に関する法律 第25条
第二十五条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
情報処理の促進に関する法律 第59条
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
この秘密保持義務が厳しくて、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金があります。しかも、情報処理安全確保支援士でなくなった後も、この罰則が適用されます。
【デメリット3】登録を取り消した後、再登録できない
とりあえず情報処理安全確保支援士に登録してみた!という方が、この資格にメリットを感じられず、一旦登録を取り消したとします。その後、気が変わって再度登録しようと思っても、簡単には再登録できないようです。まずIPAのFAQによれば、「登録が取り消された」場合、2年間は登録できません。
Q2-13.経過措置対象者の場合、登録が取り消されたあとに再登録は可能でしょうか?
よくあるご質問
A.経過措置対象者の場合、登録申請できるのは2年間です(平成30年8月19日に申請を締切りました)。登録が取り消された場合は、その後2年間登録ができませんので、再登録するためには、新たに情報処理安全確保支援士試験に合格することが必要となります。(関連事項:Q1-4)
これの根拠が以下の条文です。
次の各号のいずれかに該当する者は、情報処理安全確保支援士となることができない。
情報処理の促進に関する法律 第8条
四 第十九条第一項第二号又は第二項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者
関連するFAQをみると、試験に合格したという事実が消えるわけではないので、2年間待てば再登録はできるようです。2年間も待てない、ということであれば、再度試験を受けて、合格する必要があります。
Q1-4.情報処理安全確保支援士としての義務に違反した場合は、どうなりますか?
よくあるご質問
A.情報処理安全確保支援士としての義務(信用失墜行為の禁止、秘密保持義務、講習受講義務)に違反した場合は、経済産業省により「資格名称の使用の停止」又は「登録の取消し」の処分が命じられます。
①情報処理安全確保支援士試験合格者
・登録を取り消された場合は、2年間は再登録できません。
なお、情報処理安全確保支援士試験の合格そのものは有効ですので、再登録の際に再度情報処理安全確保支援士試験に合格していただく必要はございませんが登録免許税、登録手数料、その他書類は再度必要です。
本件について、IPAに問い合わせした方がいらっしゃるようなので参考にしてください。自ら登録を取り消すことを「消除」と呼ぶようですが、消除も取消と同じようなことなので、上記で示した法第8条(2年経たないと登録できない)が適用されるようです。
結局、消除も取消と同じ法律効果を有するというのが、お役所側の認識という事でした。
引用元:情報処理安全確保支援士の経過措置対象者に関する問い合わせと、回答を受けた私の決断
結論
試験に合格したとしても、登録はしないほうがよい、という結論に至りました。所属している企業で情報処理安全確保支援士への登録を要求されるとか、情報処理安全確保支援士の独占業務が生まれるとか、本当に必要に迫られるまでは登録はせず、いつでも登録できる状態をキープしておくほうが無難です。
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